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今回はプロジェクトを作成します。前回までの流れで、原文ファイルの検証や翻訳メモリーの作成、用語ベースの作成などの下準備が整っているものとして解説を進めていきます。
Tradosにおけるプロジェクトとは
個人の翻訳者にとって、Tradosのプロジェクトは通常、翻訳業務で日々言われる「案件」とは異なるコンセプトです。翻訳会社で案件管理を担当しているのでない限り、クライアントごと、またはいわゆる「案件」ごとでなはく、類似性と再利用性が高いことを優先に、分野ごとにプロジェクトを作成すると便利です。ここでは訳文を再利用しやすくし、翻訳メモリーを無駄に大きくしないために分野や業種ごとに分類したものを「プロジェクト」と理解します。
新規プロジェクトを作成する
左側ナビゲーション(以下「左ナビ」)はひとまず「プロジェクト」を選んでおきます。そして、ツールバーの「ファイル」→「新規」→「プロジェクト」をクリックします。(↓)

この画面では「プロジェクトテンプレートをベースにプロジェクト作成する」にチェックが入っており、ここではひとまず「Default」のままで「次へ」をクリックします。(↓)

次のこの画面で、まずプロジェクトの名前や保存場所を決めます。「名前」と「場所」が必須事項で、その他は必要に応じて入力しておきます。(↓)

(↑)ここでは特に「場所」に気を付けて下さい。この講座では、「フォルダーを作成」で解説したようにコンピュータのFドライブに「翻訳」というフォルダーを作成し、その中にTrados関係のフォルダーとして「トラドス」を作成した上で、この中にさまざまなプロジェクトを保存するための「プロジェクト」というフォルダーを作成しています。
また、プロジェクト群となる「プロジェクト」フォルダーの中には今回のサンプルプロジェクトを保存するための「サンプルプロジェクト」フォルダーを作成しています。デフォルトの通りのままにして早急に「次へ」をクリックせず、「参照」ボタンを押して、きちんと保存先を指定します。
したがって、上記では場所は「Fドライブ」→「翻訳」→「プロジェクト」→「サンプルプロジェクト」としています。指定された「サンプルプロジェクト」フォルダーには、プロジェクトを作成後に、そのプロジェクトに関連するフォルダーやファイルが自動的に作成されます。
現時点での保存先フォルダーは空のままです。(↓)

ひとまず名前を「サンプルプロジェクト」とし、説明を「Trados講座のためのサンプル用プロジェクト」、場所を「F:\翻訳\プロジェクト\サンプルプロジェクト」として、「次へ」をクリックします。
次は原文言語と訳文言語を指定します。まずは下の画像のように、原文言語で中国語簡体字Chinese(People’s Republic of China)を選択して下さい。(↓)

訳文言語は、無数にある言語のなかから日本語Japanese(Japan)を選択し、「追加」ボタンをクリックして下さい。(↓)

そうすると、右側の「選択された言語」のビューに日本語が追加されます。確認できたら「次へ」をクリックします。(↓)

次はプロジェクトにファイルを追加しますので、「ファイルの追加」をクリックします。(↓)

「翻訳」→「2011年」→「9月」→「原文」のフォルダーに保存してあるサンプルの原稿を開きます。(↓)

サンプルの原文ファイルが追加されました。(↓)

プロジェクトには複数のファイルを追加することができます。あとからファイルが増えた場合や、納品前にもともとの原文に修正が行われた場合など、ファイルが増えてプロジェクトのファイル構成が見づらくなったら、フォルダーを作って管理しやすくします。
ここではフォルダーを作成せず、原文ファイル1件の追加が終わった時点で「次へ」をクリックします。
続いてプロジェクトに翻訳メモリーを割り当てます。ここで新規に翻訳メモリーを作成することもできますが、この講座では「サンプルメモリー」を作成済みですので、それを追加します。「追加」ボタンをクリックし、「ファイル共有タイプの翻訳メモリ」を選択します。(↓)

Fドライブ→「翻訳」→「トラドス」→「メモリ」のフォルダーに保存してある「サンプルメモリー」を選択して下さい。(↓)

プロジェクトに「サンプルメモリー」が追加されました。(↓)

続いて検索条件を設定します。あとからでも設定を変更できますが、ひとまずここで設定しておきます。左側のガイドのなかから、「全ての言語ペア」の「翻訳メモリと自動翻訳」の「検索」をクリックし、右側の一致最小値を好みの数値に設定します。デフォルトでは70%になっていますが、私自身は40~50%にしています。 (↓)

「全ての言語ペア」についてですが、このプロジェクトは中国語から日本語に翻訳するものです。ペアはこの中国語→日本語の1組だけですので、「全て」というのは、そのまま中国語→日本語のペアだけということを指しています。
同時に中国語→英語への翻訳や英語→ドイツ語への翻訳なども同じプロジェクトに追加している場合は、それぞれの言語ペアに対して個別に適用する項目と、これらに共通して適用する「全ての言語ペア」を設定することになります。
次はプロジェクトに用語ベースを割り当てます。「サンプル用語ベース」を作成済みですので、それを追加します。「追加」ボタンをクリックし、出てきた画面の指示に従って用語ベースを追加して下さい。(↓)

「追加」をクリック後に出てきた画面で「参照」を押し、用語ベースを保存したフォルダーから「サンプル用語ベース」を開きます。(↓)

そうすると用語ベースのリストに「サンプル用語ベース」が追加されますので、「OK」をクリックします。(↓)

もともとのウィンドウにも「サンプル用語ベース」が追加されています。複数の用語ベースを使う場合はさらに追加することができますが、今回はこれで「次へ」をクリックします。(↓)

次は非常に重要な「プロジェクトの準備」です。
まず下記のように「連続タスク」のところがデフォルトでは「準備」となっており、「一括タスク」のところに「翻訳形式への変換」「訳文言語へコピー」「一括翻訳」「プロジェクト用翻訳メモリの入力」というタスクが含まれています。(↓)

しかし、このままでは「プロジェクト用翻訳メモリの入力」というタスクによって、新しくこのプロジェクト用の翻訳メモリーが勝手に作成されてしまい、Tradosが自動的に決めた場所に翻訳メモリーが好ましくない名前で保存されることになります。
本来は自分が把握しやすい場所に、自分にとって分かりやすい名前で作成した翻訳メモリーを適用したいのであり、そのためにプロジェクトに翻訳メモリーを追加したというわけです。
そこで一括タスクから「プロジェクト用翻訳メモリの入力」だけを省くのですが、この時に「連続タスク」の「準備」を「プロジェクト用TMなしで準備」に変更します。ちなみにTMというのはTranslation Memoryの略で、翻訳メモリーという意味です。(↓)

(↑)このように連続タスクで「プロジェクト用TMなしで準備」を選ぶと、一括タスクから例の「プロジェクト用翻訳メモリの入力」が除かれます。これで、プロジェクトに対しては事前に作成した「サンプルメモリー」がうまく適用されます。
ここでデフォルトの「準備」にしたまま手順を進めていくと、原文-訳文のペアはTradosが勝手に作成した翻訳メモリーの方に記憶されていき、あらかじめ作成し、プロジェクトに追加した「サンプルメモリー」は何も記録してくれません。この「準備」は、事前に翻訳メモリーを作成していない場合や、あるいはわざわ翻訳メモリーを作成せず、てっとり早く翻訳を開始したいケースで使用することがあります。
「プロジェクト用TMなしで準備」をクリックすると、下のように一括処理の設定を行う画面になります。ここは何も操作せずにそのまま「次へ」をクリックして下さい。(↓)

最後は確認画面です。直すところがなければ「終了」をクリックして下さい。(↓)

あとはTrados 2009が処理をしてくれます。次の画面ではTrados 2009が
・翻訳形式への変換
・訳文言語へのコピー
・ファイルの解析
・一括翻訳
といった処理をしてくれました。(↓)

上記の4つの処理の意味はTradosを使用していくうちに分かるようになります。
また、この処理のプロセスでエラーが出る場合があります。経験上、複雑にレイアウトされたり、ボリュームのあるOffice 2003系のファイルでエラーが出やすい感じです。そのような場合はOffice 2010や2007を使ってそのファイルを開き、新しいバージョンのファイル形式(例:.docx、.xlsx、pptxなど)で保存し直して、これを原文ファイルとして使用することで対応します。
無事に処理が完了したら「閉じる」をクリックし、画面を閉じます。
あとは確認です。左ナビの「プロジェクト」を選んでいるので、右側のビューにはプロジェクトの関連事項が表示されています。ここに先ほど作成した「サンプルプロジェクト」が加わっています。(↓)

プロジェクトの名前が太字になっていますが、これはそのプロジェクトが選択されているということを示します。また、プロジェクト名をクリックすると、次のように詳細情報を見ることができます。(↓)

(↑)上記の詳細情報では「プロジェクトの詳細」「ステータス情報」「解析結果」「タスクの履歴」を切り替えてみることができますので、いろいろと参照してみて下さい。
プロジェクトフォルダーを確認する
プロジェクトの作成が完了すると、最初は何もなかった「サンプルプロジェクト」のフォルダー内にいろいろなファイル、フォルダーが自動的に作成されています。
最初は何もなかったフォルダー(↓)

プロジェクトを作成後の状態(↓)

(↑)このなかの「サンプルプロジェクト.sdlproj」がプロジェクトファイルの本体です。
「zh-CN」フォルダーには、コピーされた原文のファイルの「Windows下的PHP环境配置.docx」と、その翻訳形式のファイルである「Windows下的PHP环境配置.docx.sdlxliff」が入っています。
「ja-JP」フォルダーには、現時点では翻訳形式の日本語訳文ファイル「Windows下的PHP环境配置.docx.sdlxliff」だけが入っています。このあとでTrados 2009で翻訳しながら「訳文を保存する」と、このフォルダー内に訳文のWordファイルが加わります。
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